人生を俯瞰で見てみる

ふたつの会話をきっかけに、私はゆっくりだが確実に、変わっていった。
人生を俯瞰で見るようになり、いつか寿命が尽きることを意識できるようになったのも、この頃だった。
もっと過酷な状況から這い上がった人にも目を向けてみた。

ベトナム戦争中に捕虜になり、地獄さながらの一年を生き抜いたあるアメリカ人兵士の体験談を読んだ。
わずかな食糧を与えられ、脅威にさらされ、ひどい拷問を受けながら、命を落とさずにすんだのは、希望と目標に意識を集中したからだった。
いつか解放されるという希望と、故郷に帰って家族を築きたい、という目標。
頭のなかで、将来建てる家の煉瓦をひとつずつ積みあげる想像をしたという。

過去の自分と比べる

自分よりも一〇〇万倍苦しい状況にあった彼が、やる気を保ち続けたのなら、私も絶対に頑張らなければ、と思った。
さらに私は、過去の自分と比べることで、やる気を高めた。
お前はもともとタフで、限界以上に頑張れる人間じゃないか。
新しい基準を自分に設けると同時に、確固とした目標を設定し、トレーニングと勉強に励むことを決意した。
確固とした目標とは、経営学修士(MBA)を手に入れることだ。
頭痛と首の痛みを抱えながらの学生生活だったが、いつかこの経験をプラスに変えなければならない。
思いどおりに立ち回れるようになったときの爽快な気分に、意識を集中した。
私は徐々に、逆境が好きになった。
また勝ちたいと思った。

私は、一一年をかけてビジネススクールを卒業した。
長く、困難な道のりだった。
修士論文の成績が「A」だと電話で聞いたとき、うれし涙があふれてきた。
ついにやり遂げたぞ!現在の日々の仕事に、事故後の経験が生かされている。
あの経験がなければ、今の私はない。
人生の浮き沈みについて多くを学べたこと、どん底から対極の幸福感と快感を味わえたことを、ありがたく思っている。

「強力な行動に備えて力を結集すること」と「予期すること」

ここでの重要なキーワードは、「強力な行動に備えて力を結集すること」と「予期すること」である。
誰でも、ついている時期にはいい人になれるし、物事が順調なときは、いいパフォーマンスができる。
だから、小さな障害に直面したときに前に進む能力こそが、往々にしてダントツとその他大勢を分ける差になる。
ビジネスマンなら、厳しい市場でいい成績を出す。
スポーツ選手なら、身体の故障を抱えてよい結果を出す。
どんな人でも、キャリアのなかで、厳しい戦いを経験するだろう。
そんなとき、上手に戦いに挑める人は、必ず成長する。
時間をかけて鍛えられることで、チャンピオンができあがるのだ。
厳しい時期を「予期しておく」のを忘れてはいけない。
心の眼を研ぎ澄まし、先回りして、どう戦うかを明確に決めておく。
あなたは、正直でタフでクリエイティブな、「絶対にあきらめない」辛抱強い人になりたいはずだ。
何かに備えて力を結集できる人に。
他の人があきらめるとき、あなたは次の言葉をつぶやく。
「自分は続けるぞ。今が頑張りどきだ。こういうときこそ、自分の強さと人となりを証明するときだ。自分を見損なうな。死なない程度の打撃は、自分を強くしてくれる。来たる勝利にともなう極上の気分を味わうために、今は苦痛を経験しておく。夢やゴールを想像して、逆境のなかでも小さな一歩を進めるんだ
この世であなたが確実にコントロールできるのは、あなたの思考だけなのだ。

おすすめの記事